2023年度

八王子市の滝山病院患者暴行事件についての声明


 東京都八王子市の滝山病院において複数の患者に対する暴行が明るみとなり、報道や特集番組からも、入院患者の人権を無視した暴行をはじめとする虐待の実態が明らかになりつつある。同院については30年以上前から入院患者の死亡退院率の異常なまでの高さや正規職員の少なさを始めとする問題点が指摘され続けてきたが、行政の監査等は機能せず、このような状況が長年放置されてきたものである。報道のなかには、患者を殴る職員の横にいて何もせずにいる職員の姿も映し出されており、滝山病院において暴力や虐待が日常的に行われていたことがこれからも示唆される。精神保健医療福祉従事者の一人一人が人権意識を高め、このような暴行を始めとする人権無視を許さない気持ちを強くもつとともに、人権無視が生じないための社会的仕組みを検討する必要がある。

 滝山病院は、精神障害を持つひとに対する人工透析体制を備え、他の病院が受け入れを拒むような対応困難例の受け入れもしていたことから、東京都の精神病院統計や国の630調査により問題点が多々指摘されてなお、精神保健医療福祉関係者から「必要悪」として容認されてきた病院である。このような暴行が行われている病院を「必要悪」としてきたことを精神保健医療福祉従事者は深く認識しなければならない。そして、この問題の背後に存在する、精神障害者の医療・保健・福祉の社会的背景と構造的問題を明らかにし、その変革のための具体的取り組みを検討して実現することで、長期の身体的治療を必要とする人も含めすべての障害者が地域内で暮らせる、人権が守られる社会を作っていかなければならない。私達精神保健従事者団体懇談会は、今後そのような議論を積極的に展開するとともに、専門職としての倫理遵守をさらに推し進める所存である。

2023年5月22日
精神保健従事者団体懇談会

(賛同団体)
(公社)全国自治体病院協議会精神科特別部会、全国精神医療労働組合協議会、
(特非)全国精神障害者地域生活支援協議会、全国精神保健福祉センター長会、
全国精神保健福祉相談員会、全日本自治団体労働組合衛生医療評議会、
(一社)日本作業療法士協会、(一社)日本集団精神療法学会、
(一社)日本精神科看護協会、 (公社)日本精神神経学会、
(一社)日本精神保健看護学会、(公社)日本精神保健福祉士協会、
(一社)日本総合病院精神医学会、 日本病院・地域精神医学会、日本臨床心理学会