2008年度意見書・要望書

2008年3月12日

各都道府県 知事、各政令指定都市 市長、各中核市 市長

精神保健従事者団体懇談会

(社団法人日本精神神経学会、日本病院・地域精神医学会、
社団法人日本作業療法士協会、全日本自治団体労働組合 衛生医療評議会、
日本臨床心理学会、全国保健・医療・福祉心理職能協会、
日本精神保健看護学会、有限責任中間法人日本総合病院精神医学会、
日本児童青年精神医学会、全国精神医療労働組合協議会、
特定非営利活動法人全国精神障害者地域生活支援協議会、
社会福祉法人全 国精神障害者社会復帰施設協会、
社団法人日本精神保健福祉士会)
※賛同団体のみ

 「退院支援施設」に関する要望書


 貴職におかれましては、日頃より精神医療・保健・福祉の充実のために尽力されていることに敬意を表します。

 私たちは、精神障害者が地域であたりまえに暮らしていける社会の実現を目指して活動している精神医療・保健・福祉関係団体です。

 これまでの国の精神障害者に対する隔離収容政策が、世界に類を見ない数の精神病床と長期に及ぶ「社会的入院」を生み出してきました。

 「社会的入院」が余儀なくされることは精神障害者の生活権の侵害を意味するものでもあり、その解消が急がれるところです。そうしたことから、各自治体による障害者計画の中でも、社会的入院の解消と精神障害者の地域移行が重要な課題となっています。

 ところが、厚生労働省は昨年4月1日に精神障害者「退院支援施設」の運用に踏み切りました。この「退院支援施設」の設置は、「看板の書きかえ」によって「社会的入院の解消(精神病床の削減)」という「数合わせ」をしようとするものにすぎません。社会的入院患者が病棟転用の「退院支援施設」に移ってもその生活実態は全く変わらず、真の地域移行が保証されているわけではありません。それまでの病院生活と本質的に変わりない施設生活に移され、単にその費用が医療費から自立支援法による福祉財源によって賄われるようになるだけのことです。

 この「退院支援施設構想」に対して、障害当事者団体はもとより、障害者支援団体、精神医療・保健・福祉関係団体、その他多くの関係団体がその撤回を要求してきましたが、国はそれを押し切って実施することにしました。

 この「退院支援施設」が社会基盤整備の進まない中、社会的入院者の終の棲家になるのでないかと心配されます。これに対して厚生労働省は「地域移行推進協議会」を事業者に作らせて、その運用の適正化を図るとしています。しかし、この協議会についてはその第三者性に問題があり、退院支援施設におけるサービスの質や事業の実効性などについて厳しく評価されないことも予想されます。

 これまでの誤った精神医療施策のために人生を台無しにしてしまった人々が大勢います。日本の精神病床数34万床の半数近くが5年以上の長期入院者で占められています。誤った歴史を繰り返してはならないと思います。

 今求められているのは、名ばかりの「退院支援施設」を作ることでなく、精神障害者の地域移行のための基盤整備に力を注ぎ、本来の退院促進支援活動を充実させることだと思います。

 つきましては、「退院支援施設」に関して、下記の通り要望いたしますので、ご高配の程、何卒よろしくお願い申しあげます。

  1. 事業者から「退院支援施設」の指定申請があっても認めないでください。
  2. 住宅確保(グループホーム・福祉ホーム・公営住宅の障害者優先利用、住居入居支援)、退院促進支援、生活支援(ピアサポート、ホームヘルプ、生活ヘルプ、地域活動支援センター)など、障害者が地域で暮らすための基盤整備こそを推進してください。
  3. 退院支援施設整備でなく、本来の自立支援事業や居住資源整備のための予算確保を国に要求してください。