2011年度意見書・要望書


内閣総理大臣様

東日本大震災被災者の「こころの健康」への長期的支援についての要望

2011年8月8日

精神保健従事者団体懇談会

  私たち精神保健従事者団体懇談会(精従懇)は、精神保健・医療・福祉従事者の所属する18の職能団体、職域団体、学術団体によって構成されています。今回の東日本大震災においては、発災直後から現在まで様々の形で、「精従懇」加盟団体関係者を含む多くの精神保健・医療・福祉従事者が、被災者の「こころの健康」支援活動を展開してきました。
 東日本大震災は、人的・物的被害が甚大であること、被災地が極めて広域であること、地震と津波の直接被害に加え福島第一原発事故による放射能汚染という特殊な事態が今なお終息していないことなど、いずれをとっても未曽有の体験であり、こうした状況下で行われる「こころの健康」支援活動もまた、数々の困難に直面してきました。
 さて、発災から4ヶ月以上が経過し、被災地ではライフラインの復旧や仮設住宅への移転などが進むにつれて災害急性期の混乱を脱したところもあります。一方で、地域社会の基盤が根こそぎ失われたまま生活の見通しがほとんど立たない地域もあるなど、被災地間格差や被災者間格差はむしろ深刻化しています。そしてこうした中で、全国各地から派遣された「こころの健康」支援チームが撤収ないし縮小する動きが始まりつつあります。これまで展開されてきた支援活動が、地域精神保健福祉体制の復旧を待たずに、あるいは円滑に引き継がれることなく打ち切られていくことに対して、私たちは重大な危惧を抱いています。
 被災者の「こころの健康」被害に対するケアが年単位の長期にわたって必要であることは、仮設住宅入居後の孤独死や自殺が問題となった阪神淡路大震災をはじめ、過去の経験が教えるところです。また、精神障害のある人々が過酷な環境変化の中で孤立するのを防ぎ、医療福祉サービスを継続できるようにする取り組みも、これからが正念場です。
 私たち「精従懇」は、支援の届きにくい人や地域にこそ、息の長い「こころの健康」支援が必要であることを強く認識し、それを実践すべく今後とも全力を尽くします。
 国におかれましては、こうした支援活動が長期継続的かつ十分に行えるよう特段の制度的、財政的なご配慮をいただけるよう切に要望いたします。

 

精神保健従事者団体懇談会(精従懇)《加盟団体》
国立精神医療施設長協議会/ (社)全国自治体病院協議会 精神科特別部会/ 全国精神医療労働組合協議会/ (NPO)全国精神障害者地域生活支援協議会/ 全国精神保健福祉センター長会/ 全国精神保健福祉相談員会/ 全国保健・医療・福祉心理職能協会/ 全日本自治団体労働組合衛生医療評議会/ (社)日本作業療法士協会/ 日本児童青年精神医学会/ 日本集団精神療法学会/ (社)日本精神科看護技術協会/ (社)日本精神神経学会/ 日本精神保健看護学会/ (社)日本精神保健福祉士協会/ 日本総合病院精神医学会/ 日本病院・地域精神医学会/ 日本臨床心理学会  (五十音順)

※なお、同様の要望書を総務大臣様、財務大臣様、文部科学大臣様、厚生労働大臣様、国土交通大臣様宛にも提出させていただいております。

 2011年7月26日

参議院内閣委員会委員
(〔民主党〕相原久美子、大久保潔重、岡崎トミ子       
〔自民党〕宮沢洋一、山谷えり子、〔公明党〕谷合正明、
〔みんなの党〕小野次郎〔無所属〕糸数慶子)

精神保健従事者団体懇談会
代表幹事 岡崎 伸郎(社団法人日本精神神経学会)
木太 直人(社団法人日本精神保健福祉士協会)
金杉 和夫(日本病院・地域精神医学会)



障害者基本法改正についての要望


 現在国会で審議中の障害者基本法改正案について、精神保健・医療・福祉に従事し、精神障害者の人権と福祉の実現を願う者として、意見を申し上げます。
 
 今般、障害者基本法が障害者権利条約の理念にのっとり、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することができる社会を実現するため」の基本原則として改正されることは障害者の人権の実現を大きく前進させるすばらしい成果だと考えます。

 しかしこの改正案には、精神障害者の人権と福祉の実現のための規定が欠けていることに我々は大いに落胆せざるを得ません。  改正案は障がい者制度改革推進会議の平成22年12月17日に発表された「障害者制度改革の推進のための第二次意見」に基づいて策定されたと聞いています。「第二次意見」は、精神障害者に係わる地域移行の促進と医療における適正手続きの確保などを障害者基本法改正に当たって政府に求めています。我々はこれらの事項を障害者基本法に盛り込むことが是非とも必要であると考えます。  

 最も劣悪な状況に置かれてきた精神障害者の人権と福祉を改善しなければ、真の意味で「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することができる社会を実現する」ことはできません。
 
 現段階では条文そのものの修正は困難であるとすれば、「障害者制度改革の推進のための第二次意見」に示された精神障害者の人権と福祉の実現のための施策を、下記のように障害者基本法改正の付帯事項として盛り込むようお願いします。

1. 精神障害者の社会的入院の解消、精神病床の削減、精神障害者の地域社会での自立した生活への移行のための施策を講ずること。

2. 非自発的な入院や隔離拘束を受ける障害者の人権尊重のための実効性のある適正な手続きを確保すること